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本:心をあやつる男たち [Book]

 3月第1週目(だったか?)AMラジオで、旧ソ連抑留者の何だかの請求期間が今月末(H21.3月末)までと言ってました。確か、あまりにも適当で実数がよくわからない数十万人の方々が旧ソ連で亡くなっていたはず。政府でも把握できていないものを何とかしたいという制度があったのでしょう。その期日が今月末。そういう公の放送を聞いて、まだ戦後は終わってないんだなと。この放送で頭に浮かんだ本が実話だった、辺見じゅん著「収容所(ラーゲリ)から来た遺書」。学生の頃買ったけれど、確か最後まで読み終わらずに中断したまま終わったはず。家で本の入っている棚を崩しながら探していたら、ふと目にとまったのが、福本博文著 文春文庫刊「心をあやつる男たち」(文庫:1999年刊、単行本1993年刊)。これもまた読了しなかった記憶があるけれど、この本があったこと自体が頭の片隅にもなかった。昔は買った本は全て覚えていたし、買った本屋やその時の状況も覚えていた。状況が浮かぶということは買った歳もだいたいわかるということ。しかし、今こういうディティールがほとんど失われつつあります。これが歳をとるということなのでしょう。

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心をあやつる男たち (文春文庫)「心をあやつる男たち」
福本博文著 文春文庫刊

 この本は、実験室訓練だった教育法が産業界へ流れ込み、その流れを組む「教育カルト(自己啓発セミナー)」が台頭してきた過程を一人の男に焦点を当てた話。簡単に言うと自己啓発セミナーは、全く逃げられない状況で、約1週間ほど感受性の訓練という「心理的な拷問」が続き、禅でいう「悟りの境地」、自己を破壊させて組みなおす「チェンジ体験」にまでなんと1週間(!)で到達させる。1週間で「悟り」を開かすために暴力だろうが暴言だろうが監禁だろうがどんなことでもする(実際死人も出た)。寺の老子ですら「私たちが20年も座らなければ到達できない境地を、1週間でおやりになっているとは恐ろしいものですね」と言う。当然自己を破壊されたけれど組みなおせなかった場合は廃人になってしまう(簡単にいうと発狂)。セミナーの一連のプロセス後には、人間的な判断を失った人間に仕上げられてしまうという訳。

 自己啓発セミナーで発狂してしまうのは、真面目で上役の言うことは何でも聞くといった人。出席したくないと言って逃げきれる人、またグループの中で不真面目で逃げきれる人は大丈夫。会社への忠誠心が希薄な人間ほど精神的には健康であるということになる。恐ろしいことに、1970年夏に日経連などが行った調査では、およそ1割の大企業がこういうセミナーを導入していたということ。企業側は、この特訓を難なく通り抜けてこそ管理者の資格があるといった認識があり、このセミナーを「踏み絵」にしていたこと。途中で逃げ出す社員をクビにしたこともあったそう。セミナーでは隠し通していた弱みを見抜かれたり、自分でも気づかなかった重大な問題点を発見することがよく起きる。それらをバネにして強靱な精神力を培うことも企業が導入する狙いのひとつ。しかし、まともな人間となって帰ってくればいいけれど、社会不適応な興奮状態となって終了していたことが多かったように思う。その興奮状態があまり持続しないことがせめてもの救いだけれど(発狂してしまった人は別にして)、本人が受けたいか受けたくないかは関係なく、会社に残りたいのならこれを越えなければいけなかった。終身雇用と言われていた時代にこれは相当キツイものだったはず。この時代に生まれていなくてよかったと思った。しかし巻末の解説でも書かれていたけれど、今でも企業の中では新入社員への「みそぎ研修」としてやっているというのを聞きます。その場合、そういう会社自体がカルトだということ。必ず上の体質がクレイジーだということなので、遅かれ早かれ自分の精神が病んでしまう前に退散した方が身のためです。

 私は、今もだけれど昔もかなり適当なだらしない性格だったので、父親から「お前みたいなヤツは自衛隊にでも(この言い方失礼!)入って、腐った根性を性根から叩き直してもらえ!!!!!」とよく言われてました。ウチの父親は普通はありえんことでも素でやってしまう恐ろしさがあったので、ホントまじで自衛隊入れられるのではないかと思ってました。その頃新聞の下段広告によくドーンとあったのが「地獄の特訓」の広告。父親がこれ見たら自分が知らない間に申し込まれているのではないかと、書かれてある参加者のコメントと行軍しているようなイラストをじーーーーっと見ていたものでした。これも自己啓発セミナーの流れのはずと思い、中に出てくるのでは?期待していたらありました。1979年6月、死人まで出したそれまでのセミナーの流れから入れ替わるように出て来たのがこの「地獄の特訓」。行軍しているイラストは、確かに真夜中の山道を40キロ歩かせていたそうです。しかし、それまでのセミナーと比べたら自我が崩壊する危険性が少ないので子どもだましのようなもの。それでも当時はこの広告は恐怖でした。

 その後、セミナーの流れはマルチ商法(昔でいう「ねずみ講」)と合流していきます。「ワンワールド・ピープル」を実現するためのシェア(分かち合い)とエンロールメント(勧誘を意味するセミナー用語)、85年度からは東京都消費者センターの項目に「自己啓発講座」が追加されてます。

 かなり昔だけど一時はまって買っていた、こういったカルト系の書籍。この1冊でマイブーム再燃です。しばらく継続して読むかもしれません。
 
 
 

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